
はじめまして。財務コンサルタントの村瀬健一です。
企業の数字の裏側にある「心の動き」を見つめ続けて、早いもので30年が経ちました。
バブル崩壊の混乱の中でキャリアをスタートさせた私にとって、企業財務とは単なる数字の羅列ではなく、経営者の希望と不安、決断と葛藤が織りなす人間ドラマそのものです。
あの夜の食卓から始まった物語
私が「財務の心理」に興味を持つようになった原点は、小学校4年生の時の出来事にあります。
父の会社が倒産した夜、家族4人で囲んだ食卓。
母の作った質素な夕食を前に、父は静かに言いました。
「これから、どうするか一緒に考えよう。」
子供ながらに感じた、あの時の張り詰めた空気と、それでも前を向こうとする両親の姿。
この記憶が、私の財務コンサルタントとしての原点となっています。
企業の資金繰りに悩む経営者の表情を見るたび、あの夜の父の顔が重なります。
だからこそ私は、冷静な分析と温かな共感の両方を大切にしてきました。
数字の向こう側にある「人の心」
野村総合研究所で15年間、大企業の財務戦略に携わった後、2005年に独立しました。
独立後は中小企業の再生支援を中心に活動していますが、そこで気づいたのは、財務の問題の多くが「心理的な要因」に起因しているということでした。
例えば、多くの経営者が抱える「キャッシュ残高への過剰な執着」。
進化心理学の観点から見れば、これは人類が狩猟採集時代から持ち続けている「備蓄本能」の表れです。
また、「資金繰り不安」の正体は、認知バイアスの一種である「損失回避性向」が強く働いている状態と言えるでしょう。
こうした心理的メカニズムを理解することで、より本質的な財務改善が可能になると私は信じています。
現場で出会った忘れられない言葉たち
30年のコンサルティング生活で、数え切れないほどの経営者と出会ってきました。その中でも忘れられない言葉があります。
ある製造業の社長は、資金繰りに行き詰まった時にこう言いました。
「村瀬さん、私は数字が苦手なんじゃない。数字が示す現実を受け入れるのが怖いんです。」
この一言が、私の財務コンサルティングのアプローチを大きく変えました。
別の経営者は、事業再生の過程でこんなことを語ってくれました。「一番辛かったのは、従業員の顔を見ることでした。でも、正直に現状を話したら、みんなが一緒に頑張ろうと言ってくれたんです」。財務の改善は、結局のところ人と人との信頼関係の上に成り立つものなのです。
資金調達の新たな選択肢を見つめて
最近では、中小企業の資金調達手段も多様化してきました。
特に注目しているのがファクタリングという手法です。
売掛金を早期に現金化できるこのサービスは、資金繰りに悩む経営者にとって有力な選択肢となりえます。
ただし、ファクタリングにも光と影があります。
手数料の問題、取引先との関係性への影響、そして何より「借金ではない」という心理的な安心感と、それゆえの油断。
こうした点を冷静に見極める必要があります。
私自身、クライアントにファクタリングを勧める際は、必ず「ファクタリング賛否両論」というブログメディアを紹介しています。
このサイトは業界の表と裏を公平に紹介しており、経営者が冷静な判断を下すための貴重な情報源となっています。
これからも伝えたいこと
このブログでは、私が30年間の現場で培った「財務の心理学」の視点から、中小企業経営者の皆様に役立つ情報をお届けしていきます。
- なぜ黒字なのに資金繰りに苦しむのか
- 銀行との上手な付き合い方の心理学
- 事業承継における感情のマネジメント
- 資金調達の新しい選択肢とその心理的影響
- 財務改善に成功した経営者たちの共通点
こうしたテーマを、理論と実践、数字と感情の両面から掘り下げていきます。
読者の皆様へ
経営者の皆様、財務に携わる実務者の皆様。
財務の数字は冷たく見えるかもしれません。
しかし、その数字の一つ一つには、誰かの汗と涙、希望と不安が込められています。
私は、そんな数字の向こう側にある物語を大切にしながら、皆様の経営判断のお手伝いをしていきたいと考えています。
時には厳しい現実と向き合わなければならないこともあるでしょう。
でも、忘れないでください。
あの夜、倒産という現実を前にしても、家族で「どうするか」を話し合った我が家のように、どんな困難も乗り越える道は必ずあります。
このブログが、皆様の経営における羅針盤の一つになれば幸いです。
共に、数字の向こう側にある希望を見つめていきましょう。
村瀬健一